2018年04月17日

幸運のベル


 星新一のショートショートに「幸運のベル」という話がある。

 近未来。販売促進のため、すべての企業が物品に「当たり」を付けるようになった。当たりは高額な現金で、余裕を持って一生遊んで暮らせるだけの額。そしてその当たり判定は物品が出す超音波で、もし当たりの場合、包装を破った時点で家庭の天井に備え付けられた「幸運のベル」が反応し、ベルが鳴り響くことになる。
 
 主人公はこのベルを鳴らすことが人生の目的のようになってしまった人物。結末は主人公が「笑い、泣き、もう一度笑い、そしてその後はずっと泣き続けた」という考えさせられるものだったのだが、我々ゴルファーも、ゴルフ道具を買う時にはこの主人公のように「幸運のベル」を鳴らすことを夢見ているような気がする。


 ジェイルブレイクテクノロジー。ツイストフェース。◯◯史上最高の飛び。プロ仕様率ナンバーワン。今度のドライバーこそ最高の1本になるだろうか?あのアイアンは打感も飛距離も私にぴったりに違いない。このウェッジならバンカーから簡単に出るだろう。このパターが私のイップスに終止符を打ってくれるかも。
 
 そう考えながら、ちょっとだけ勇気を持って購入確定ボタンをポチるのである。


 しかし現実は甘くない。幸運のベルが鳴ったような気は確かにしたのに、それが空耳だったということは早くて1回め、遅くとも数回のラウンドで判明する。ああ、今回もか。やっぱり。そんな虫のいい話はないよな。そしてまたメーカーのウェブサイトを見に行く。

 「俺は鳴らしたことがあるよ」という人がたまにいるけれど、本人がそう思っているだけでやっぱり空耳だったりする。でも、空耳であっても聞こえていることは幸運なことなのかもしれない。少なくとも、空耳さえ聞こえない人にとっては。


 どうして幸運のベルを鳴らすことを夢見るのか。それは、自分に才能がないという現実や、自分の練習不足や、努力不足や、ゴルフに打ち込めない境遇から目をそらし、絶望しないため。

 だから、ゴルファーはクラブを買い続けるのである。でも、「泣き続ける」結末にするのか、それとも「笑い続ける」結末にするのかは自分次第・・・・
posted by hiro at 11:21| Comment(0) | 雑文