2015年07月14日

遠くに戻る


 弓道つながりで。昨日と同じようなことだけど。

 最近、Youtubeで弓道の増渕敦人氏の特集を見た。某国営放送の「アスリートの魂」って番組。

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 弓道とゴルフの共通点は多い。どちらもターゲットスポーツだけど、両方とも単なるスポーツの枠にとどまらない。ゴルフは「ゲーム」と呼ばれスポーツよりも奥行きが広く、弓道はその名の通り「道」つまり武術である。

 他人と競うんだけど、それはごく表面的なことで、その競技を通して「精神性」や「人生」や「生き様」などに深く関わってくるところが似た部分だと思う。そして両者とも突き詰めれば「禅的な考え」に行き着くと思う。


 さて、増渕敦人氏である。氏は「四十五十は洟垂れ小僧」と言われる弓道界(これもアマチュアゴルファーのクラブライフと重なるね)、で若干29歳にして弓道の頂点である「天皇杯」を極めた。その時の的中率、つまり矢が的を射る確率が9割超え。よくわからないけどすごいことだったらしい(ゴルフで例えると10代で日本オープンにぶっちぎりで勝ったってところか)。

 ところが、その翌年。ディフェンディング・チャンピオンとして臨んだ大会で、パーフェクト(全ての矢を的中)させたにも関わらず予選敗退してしまう。そんな氏に告げられた理由は「単なる的当てで弓道ではない」というものであった(ゴルフで例えると翌年の日本オープンでスコアはトップだったのに度重なるスロープレーにより失格になるって感じ?)。

 一見、審査員の意地悪的にも聞こえなくもないが、弓「道」とはそんなものらしい。そこから増渕氏の苦悩が始まる。20年間悩み続け、50を過ぎて一大決心する(っていうか、単にその段階で取材が入ったんだろうけど)。


 まずは体の使い方を徹底的に見直す(ゴルフで言うとスイング改造だ)。自分より年下だったり段が下の仲間や知り合いにも見てもらい、採点してもらい、修正していく。肉体トレーニングも行う。しかし結果は簡単には出ない。

 地方レベルの小さな大会に出場(県オープン的な)するが、「こんな小さな大会で、29歳で天皇杯を制した増渕が無様な弓を射る訳にはいかない」(経歴・HDCPに恥じないラウンドをしなければ)と自分でプレッシャーを掛けてしまい、ひどい結果で途中棄権する。

 氏の努力は続く。緊張した状態で弓を射るため、教え子15人ぐらいにスマートフォンで撮影させながら弓を射ったりもする。なりふり構わないその姿勢に、悩みの深さが伺える。

 さらに、全ての所作の秒数を測り、それをできるだけ揃える(プレショットルーチンの考え方)ような事もする。しかし思う矢が射れない。


 結果が出ない中、天皇杯を3回制覇している岡崎八段に教えを請いにいく氏。岡崎八段は技術ではなく精神のほうを指摘する。「弓を的中させることではなく、空間を表現する事が目的」(ボールの行方ばかり気にしないで、正しいスイングをすることに集中せよ)と説く。

 岡崎八段は続ける。「うまく(弓を)引こうとしちゃダメ」と。そして

「遠くをイメージする。大きな、遠くの世界にまで『戻る』」

 禅問答のようでよく分からない。でも、自分なりに解釈すると、弓を射るというのはつまり自分を客観視し、自然と同化させ、『我』や『欲』を捨て去り、無心になるということなのだろうか。だとすれば、クォンタム・ゴルフとやはり同じだ。

 増渕氏は言う。「失敗しないようにという意識が強い」岡崎八段はそれに対し「失敗したことで得られるものがある」「そこから次が生まれる」「そうやって自分の境地を作っていく」とアドバイス。


 番組の最後、ふたたび天皇杯に挑戦するも、予選で敗退する増渕氏。岡崎八段は言う。

「自分の目標を探し求めていく過程が『道』である」

「的とは自分の心である」


 そう、飛んで行く球は人生であり、ホールは自分の心なのだ。



 一番印象に残ったのは、岡崎八段が増渕氏に指導している時に行った言葉。

「矢なんかどこへいってもいい。とことん伸びる」
(伸びるとは、自我を自然に溶け込ませ、遠くの世界まで意識をはせるという意味だと思う。ぜんぜん違うかもしれないけど)



 そう、飛んで行くボールは単なる結果であり、どこへ飛んでも気にする必要はない。
自分のベストスイングが無心でできるかどうかが最も大事なのである。



 蛇足だが、番組中、増渕氏がゴルフについて言及するシーンがある。ゴルフは好きだ(実際にプレーするのか、どれくらいの腕前かは語られなかったが)と。氏は言う。「弓道とは、1mぐらいのパットを打つようなものだ」と。入る時は何も考えないでも入る。でも、入らない時は色々と考え、考えだすと途端に難しくなると。


 やっぱり心なんだよなあ。

posted by hiro at 10:26| Comment(0) | 目から鱗(開眼)